当院にて手術された方のご紹介です。
【アレルギー性鼻炎】
アレルギー性鼻炎による鼻づまり、鼻水、くしゃみでお悩みの患者さんです。検査をしたところ、ダニ・ハウスダスト・スギ・ヒノキアレルギーが判明いたしました。下鼻甲介粘膜レーザー焼灼術をご希望されました。
〈手術前〉
下鼻甲介粘膜(写真右)は白っぽく腫れています。腫れは高度で鼻中隔(写真左:左右の鼻腔の仕切り板)と接触しています。水っぽい鼻水があります。
〈手術後1か月〉
下鼻甲介粘膜の腫れは軽減されており、総鼻道(鼻中隔と下鼻甲介の間の通り道)が開通しています。水っぽい鼻水は減少しています。
その後、内服薬なしでも鼻づまり、鼻水、くしゃみは減少し、楽になったと喜んでおられました。
~~ アレルギー性鼻炎、花粉症がある方へ ~~
近年花粉症をふくむアレルギー性鼻炎は増加していて、日本人の3~4割が患っているという統計もあるほどです。これに伴う「鼻づまり」は、ぼーっとしたり、イライラしたり、集中力の低下や安眠の妨げになったりさせます。あげくの果てに注意力が散漫になって、仕事や家事の効率が落ちたりすることにつながります。こうした状態を『鼻性注意不能症』と言い、思いがけないトラブルにも発展しかねません。『鼻性注意不能症』の状態は、子どもの場合はさらに深刻で、勉強やスポーツに意欲はあっても、集中できないため長続きせず、成績も低下し、夜はよく眠れず、いら立って〝キレる〟子になることもあります。
また、アレルギー性鼻炎になると副鼻腔炎(ふくびくうえん)を起こしやすくなります。副鼻腔炎とは、鼻の周りの骨にある空洞部分が炎症を起こすことで、鼻づまりはさらに悪化し、どろっとした色のついた鼻水、咳、頭痛、頭重、歯痛、顔面痛、嗅覚障害などさまざまな症状が表れます。さらに副鼻腔炎は、中耳炎、眼窩内感染症など眼の病気、場合によって脳膿瘍や髄膜炎をはじめとする命に関わる脳の病気も引き起こすことがあるので軽く考えてはいけません。
さらにアレルギー性鼻炎は気管支ぜん息との関連性があると言われています。アレルギー性鼻炎は気管支ぜん息を引きおこす危険因子であり、アレルギー性鼻炎を発症していることは、将来の気管支ぜん息の発症のリスクを高めることが指摘されており、アレルギー性鼻炎を治療すれば気管支ぜん息を予防できる可能性もあります。また、すでに気管支ぜん息を併発している場合にも、アレルギー性鼻炎を治療すれば、気管支ぜん息の症状も多くの場合は改善することが示されています。特に小児のアレルギー性鼻炎は、成人型気管支ぜん息へ移行しやすいので、小児期のうちにきちんと治療しておくことが大切です。
申し上げた通り、アレルギー性鼻炎はさまざまな合併症があります。ただの鼻炎と自己判断せずに、特に2週間以上鼻水や鼻づまりの症状が続く場合は耳鼻咽喉科を受診され、適切な診察や検査をお受けになり、適切な治療を受けることが大切です。
【無呼吸、いびき】
日中眠くなることが多く、また、ご家族からいびきがうるさいとのことで受診されました。
鼻の中は軽度の鼻中隔弯曲ならびに肥厚性鼻炎があり、喉はやや狭く軟口蓋はやや厚いようでした。睡眠の検査にて、AHIは、28回/時(臥位では40回/時)と高値でした。
※ 無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index: AHI)
無呼吸(呼吸がとまっている)と低呼吸(呼吸しそこない)の総回数を記録時間(睡眠時間)で割って、1時間当たりに換算したものです。
患者さんと相談したところ、CPAP治療(マスクを毎晩つけて寝ることで気道の閉塞を防ぐ治療)はどうしてもしたくないとのことで、手術をご希望されました。まずは、鼻の空気の通りが悪いので、鼻の手術をしました(電気凝固による両側鼻甲介切除術)。その後、喉をせまくしている軟口蓋の手術をしました(軟口蓋形成術)。
経過ですが、術前は「昼間眠かった」「いびきの音がうるさかった」AHIは28回/時(臥位では40回/時)でしたが、術後は「昼の眠さは無くなった」「朝すっきりと目覚める」「いびきの音は半分以下になった」AHIは18回/時(臥位では27回/時)まで減少し、ご本人だけでなく、ご家族も喜んでおられました。
【いびき、無呼吸】
ご家族よりいびきがうるさいとの指摘を受けて来院されました。鼻の中は軽度の鼻中隔弯曲ならびに肥厚性鼻炎があり、喉はやや狭く軟口蓋はやや厚いようでした。睡眠の検査にて、AHIは15回/時(臥位では30回/時)、いびき回数は250回/睡眠と高値でした。
患者さんと相談したところ、手術をご希望されました。まずは、鼻の空気の通りが悪いので、鼻の手術をしました(電気凝固による両側鼻甲介切除術)。その後、喉をせまくしている軟口蓋の手術をしました(軟口蓋形成術)。また、舌根(舌のつけね)の若干の肥大があり、歯科にてマウスピースを作成していただきました。
〈手術前〉
軟口蓋、とくに口蓋垂の背側(←矢印部分)は大きくでっぱっていました。
〈手術後3か月〉
口蓋垂の背側への突出はほぼなくなり、喉の前後径が増大しました。
経過ですが、術前は「いびき音がひどかった」「いびきの回数がひどかった」AHIは15回/時(臥位では30回/時)、いびき回数250回/睡眠でしたが、術後は「いびきはほぼ無くなった」「いびきをかいても、音がかなり小さくなった」AHIは3回/時(臥位では4回/時)、いびき回数は7回/睡眠まで著明に減少し、ご本人だけでなく、ご家族も喜んでおられました。
~~ いびき・無呼吸がある方へ ~~
最近はいびき・無呼吸の相談が増えております。これらを放置することで脳卒中や心臓病などが引き起こされ、命に関わることがあります。ご家族よりいびきがひどいと言われた方、睡眠中呼吸が止まっていると言われた方、睡眠をとっているにもかかわらず日中眠くて仕方がない方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。自宅で簡単に検査できる機器もありますので、是非ご相談ください。